A_ソースかつ弁当
2020年5月26日に日立市幸町2-4-12にある調製元で購入(900円)

コロナ禍で急速に拡大したテイクアウト需要。人々は外出自粛を、飲食店は営業時間の短縮(あるいは休止)を求められたとはいえ、黙っていても腹は減るし、飲食店だって店賃を払わないといけません。そんな「食っていかなければならない」普遍的な原理により、今まで店内飲食のみだった飲食店が続々とお持ち帰りの商品を製造・販売するようになりました。

IMG_7270
▲海華軒の本社兼工場。1階が食堂で2階に居酒屋を構えていた

そのなかで駅弁ファンが(密かに)再注目したのが、かつて常磐線の日立駅で駅弁を手掛けていた海華軒(かいかけん)が、町の弁当屋さんとして現在も元・名物駅弁を販売していることでした。

IMG_7278

今回紹介するのは日立駅でもっとも有名だったソースかつ弁当です。1993年の発売開始から構内営業を撤退する2008年まで駅弁として売られ、その後は現在まで元駅弁として売られているアラサーの歴史を持っています。昔と変わらない「掛け紙・閉じヒモ」のスタイルがうれしいですね。

駅売り時代は「なかなか買えない弁当」として名高い一品でした。というのも、日立駅の利用者というは通勤通学で使う地元客と、日本鉱業(日鉱)、日立製作所(日製)の関係者。それゆえ平日しか駅弁が置かれず、休日休みのマニア諸君を泣かせていたわけです。

IMG_7285
▲夜の常磐線グリーン車で車内灯だけを頼りに撮影したら失敗しました…

内容は数種のソースにケチャップやみりんなどを混ぜた特製たれに揚げたてのトンカツを浸し、それを白飯に載せたもの。付け合わせはキャベツの千切り、漬物、梅干し、切昆布煮です。商品開発に関しては、名古屋地方の味噌カツにヒントを得たとか。

トンカツ1切れと1/3サイズが載っており食べ応えは十分。甘味のあるタレが食欲をそそり、出張サラリーマンに愛されていたというのも頷けますね。

IMG_7287

駅弁屋というのは普通、地域の特産品を使った商品を手掛けることがほとんどですが、海華軒はこのソースかつ弁当をはじめ、揚げ物だらけの幕の内弁当「風流弁当」や「牛さらだ寿し」など、男性の腹満たしに特化した弁当だらけでした。

日立駅なんて用事もないと思いますが、通りかかった際にはぜひどうぞ。うれしいことに休日でも買えますが、平日でも予約の電話を入れておくのが無難です。飛び入りで行った私は近くのイトーヨーカドーで50分ほど時間を潰しました。